アトピー素因(気管支喘息、アレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎の既往・家族歴の有無。IgE抗体を産生しやすい素因)を持つことが多く、皮膚の乾燥とバリアー機能異常を有し、アレルギーを起こしやすいことが知られています。特徴的な左右対称性の分布を示す慢性的に経過する皮膚炎(湿疹)で、一般的に成人では6カ月以上、乳幼児では2カ月以上続くと慢性と判断します。刺激やアレルギー反応が加わって症状が生じると考えられています。慢性的な疾患ではありますが、適切な治療をきちんと受ければ、いずれ治ったと同様の状態になることが期待されます。
近年、アトピー性皮膚炎患者さんのバリア機能の異常にフィラグリンの発現低下が関与していることが注目を集めています。フィラグリンは皮膚のバリア機能を保つのに必要なたんぱく質です。さらにフィラグリンが分解する時に天然の保湿因子になり、皮膚に潤いを与えています。そのためフィラグリンの産生が低下すると肌のバリア機能に異常が起きるわけです。アトピー性皮膚炎の4人に1人は、フィラグリンというたんぱく質を作る遺伝子に異常があることもわかってきました。
治療
外用療法
・保湿(ヒルドイドS軟膏®・プロペトなど)
・ステロイド軟膏
・タクロリムス軟膏(プロトピック®軟膏)
・デルゴシチニブ軟膏(JAK阻害剤・コレクチム軟膏®)
適量の外用を行うことが大切です。フィンガーチップユニット(FTU)を用いて保湿を行います。ステロイドについては症状に応じてランクを選び、外用を行います。外用前に保湿剤と混ぜて使用していただく方法もあります。
リアクティブ療法
症状が出てから出ている部位に抗炎症作用(ステロイド、タクロリムス軟膏など)の軟膏を外用する方法
プロアクティブ療法
再燃を繰り返す湿疹に対して急性期の治療により症状緩和後も、保湿外用薬によるスキンケアに加えて、抗炎症作用のある軟膏を週2回程度塗り、安定した態を維持する治療法です。
保湿
湿外用剤はアトピー性皮膚炎で低下している角質層の水分含有量を改善し、皮膚バリア機能を回復・維持することで、アレルゲンの侵入予防と皮膚炎の再燃予防・痒みの抑制につながります。入浴直後に行うことがポイントです。
入浴のポイント
アトピー性皮膚炎では、皮脂汚れ・外用薬・汗の付着や黄色ブドウ球菌などの感染性病原体の定着がみられ、皮膚症状の悪化要因となりうると言われています。入浴による皮膚を清潔に保つことは大切です。
36~40℃が皮膚バリア機能回復の至適温度であり、38~40℃がよいと考えられています。基剤が低刺激性・低アレルギー性で色素や香料などの添加物が少ないものをお勧めしています。洗浄後に乾燥が強いものは避けることが大切です。
光線療法
当院ではナローバンドUVBやエキシマランプを用いて、痒み、炎症を抑える治療も行っています。
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新しい治療法
デュピクセント®️(注射)
病変内部では正常な皮膚に比べ、Th2細胞という免疫細胞が増えた状態になっています。そして、Th2細胞が産生する「IL-4」と「IL-13」という物質(サイトカイン)は炎症やかゆみを誘発するほか、皮膚のバリア機能に大切なフィラグリン(上述)発現を低下させます。デユピクセント®️では「IL-4」と「IL-13」の働きを抑えることで炎症の抑制、バリア機能の改善を目的とした薬剤です。月2回、皮下注射の治療となります。
ミチーガ®️(注射)
ミチーガはIL-31受容体に結合することにより、IL-31の結合を阻害し、それに続く細胞内への働きや伝達を阻害することでアトピー性皮膚炎のかゆみを抑制します。アトピー性皮膚炎のかゆみを誘発するサイトカインであるIL-31は、主にTh2細胞から産生されるサイトカインで、抹消神経に存在するIL-31受容体に結合し、直接的に痒みを引き起こし、さらに、かゆみ伝達神経の表皮内への伸長も促進します。
コレクチム軟膏®️(デルゴシチニブ軟膏)
細胞内の免疫活性化シグナル伝達を行うJAKの働きを阻害して、過剰な免疫反応の抑制を行い、アトピー性皮膚炎を改善する、非ステロイド性の軟膏
オルミエント錠®・リンヴォック®
軟膏療法だけではコントロールできなかった重症のアトピー性皮膚炎に対する内服薬です。
これまでの飲み薬とは異なる作用を持ち(JAK阻害剤)炎症の信号を伝える「JAK-STAT経路」をブロックすることでサイトカインの働きを抑えアトピー性皮膚炎のかゆみ、発症などの症状をコントロールします。
アレルギー検査
TARC
アトピー性皮膚炎では種々の皮膚疾患と比較して高値を示し、病勢とともに変化して重症度を反映します。重症の人は3,000pg/mlを超える場合もあります。治療によって500~700pg/ml以下まで下がると、見た目でもアトピー性皮膚炎とはわからない程度に軽症になった証拠です。TARC値は月に1回、健康保険で測定できます。小児ではSCCA2が用いられます。
総IgE抗体値
IgE抗体はダニや食物などのアレルゲンに反応する血清成分です。重症になるにつれて、高くなることが知られています。TARC値と異なり、アトピー性皮膚炎の重症度の細かな指標にはなりませんが、アレルギー体質があるかどうかの指標になります。アトピー性皮膚炎において値が高いとバリア障害があることが推測されます。また、結果が低い場合、食物由来の金属アレルギーが関与している場合もあり、ニッケル、コバルト、クロム含むチョコレート、ナッツ類、豆類などの摂取について相談させていただくこともあります。
特異IgE抗体値(View39、MAST36、CAP)
IgE抗体の中で、花粉、ダニ、ハウスダスト、カビ、食物に特異的に反応するIgE抗体や食物に特異的に反応するIgE抗体など36~39項目、あるいは単項目を13種まで選択し測定する検査です。
アレルギーテスト
結果をすぐ知りたい場合などは20分で結果の出るアレルギーテストも導入しています。
指先からの少量の血液で検査ができるのでお子様にも向いています。
・検査項目(ImmnoCAP、イムファアストチェック)
ハウスダスト系
ヤケヒョウヒダニ、ゴキブリ、ネコ皮屑、イヌ皮屑
花粉系
スギ、カモガヤ、ブタクサ、ヨモギ
食物系
小麦、卵白、牛乳
・検査に適している方
今日結果を知りたい
注射が苦手
就学前のお子様